World Women Creators 第二弾③:スリランカの女性たちが大事につくる、植物染のお洋服〜苦境に立たされても、仕事があることに感謝して、ひたむきにものづくりに取り組む女性たち〜

皆さん、こんにちは。RICCI EVERYDAYの仲本千津です。


今日は、5月にRICCI EVERYDAYが新しく始めた企画、”World Women Creators”の第二弾についてご紹介します。この企画は、ウガンダやアフリカに限らず、世界中の手工芸に着目し、製品を通じてその美しさや作り手の生活ぶり、あるいはその国が抱える課題などを、より深く知ろうという試みです。特に女性たちが中心となって織りなす手工芸をご紹介していく予定です。


第二弾は、スリランカの女性たちと植物染のお洋服を紡ぐLAILAHさんをご紹介します。LAILAH代表の藤原響子さんに、インタビューさせていただきました。今回は3回シリーズの3回目(最終回)です。


1回目の記事

World Women Creators 第二弾:スリランカの女性たちが大事につくる、植物染のお洋服〜ブランドが生まれるまで〜


2回目の記事

World Women Creators 第二弾:スリランカの女性たちが大事につくる、植物染のお洋服〜スリランカの自然からもらう色に魅せられて〜


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アトリエの様子を教えてください


縫製のアトリエでは、現在7名が働いています。その内2人は縫製トレーニングを受けつつ、染め工房でもトレーニング中。少人数のチームのため、何かあれば途端に生産のバランスが崩れてしまう危うさがあります。将来のことを考えると、時間を要する職人のトレーニングをいつ始めるかは、とても大切です。

 

10年前、縫製初心者をあえて集めてスタートするほど、『育成する、できるようになる』という成長の過程に重きを置いていました。ブランドを作ることが目的だったなら、最初からベテランを集めたと思いますし、これほど時間もエネルギーもかからなかっただろうと想像します。

子育てのリズムを中心にしつつも、仕事に真剣に取り組みたいと考えるスタッフとの関係作りは、今後も変わらず大切にしたいポイントです。スタッフたちが心地よく働けているかを常に考えながら、試行錯誤しています。

 

なるべく家庭に足を運んで1対1のコミュニケーションを持つことを意識しています。「今晩行っていい?」と聞くと、誰もが喜んで迎えてくれ、紅茶や軽食を囲んで過ごします。職場では言えないようなことを話してくれたりします。お給料を渡すことが一番の責任だけど、当然それだけではありません。彼女たちの暮らし方、信仰の厚さ、そして家庭の状況を知ることは何より大事なことで、膝を付き合わせておしゃべりするたびに、皆の気高さや優しさに触れることができ、私は無形の財産を得たような気持ちになります。

羨まれるようないいチームであることは確かですが、小さな悩みがない訳ではありません。現地に日本人スタッフをおかないことを決めているため、私が日本で仕事をしている間は、現地の女性たちだけの世界です。その時に私が全く望んでいないヒエラルキーができてしまい、たまに火種が見え隠れしています。一人一人の個性は素晴らしくても、人間関係が絡み出すと、どの世界でも起こりうる心配ごとですね。互いの仕事を尊重するフェアな関係性を培うために、役割を独占することにならないよう、責任を分散するなどの工夫に知恵を絞り、ときに見守り、ときに自分自身を高めながら、皆が気持ち良く働けるアトリエ運営をしていきたいと思います。

 

スリランカは、大変な時期を乗り越え、また今も苦境に立たされていますね。


スリランカは、内戦が終結した2009年以降の10年間、世界中から旅行者を迎え、美しい島はそれに相応しい穏やかさで満たされ、誰もが光を見つめていました。しかしその後に起きたテロや新型コロナウィルスによる感染拡大、さらには政治の失敗により国の財政がデフォルトしたことで、人々の生活は一気に苦しくなりました。ガソリンの輸入も制限され、ガソリンスタンドはいつも大行列。そうなって初めて、国民は立ち上がり、我慢強いデモを通して大統領に辞任を迫りました。現在もまだまだ物価は高騰をつづけており、お給料を上げてもインフレ率に追いつかない状況が続いています。


そんな状況下でもスタッフたちから笑顔が消えないのは、仕事があることへの感謝があるからこそ。お客様に選んでいただけることの喜びに他なりません。


そんな彼女たちを前に、私が挫けることだけはできません。子どもたちの生活や教育にも直結するため、小さな歩幅でもいいから自分自身とブランドが努力を重ね、力を付け、前に進んでいくことだけを考えています。

 

今後の展望を教えてください


幼かったスタッフの子どもたちも成長し、すでに専門学校に通いながらアトリエでトレーニングを重ねている子もいます。第二世代を育てる段階に入っていると感じたのは、LAILAHの制作チームになることを希望してくれる子が出てきたからです。それは私にとって、嬉しい驚きでした。未来をどう描いていくか、私にまた矢印を示してくれているようでワクワクしています。

もう一つの展望としては、植物染の技法をLAILAHのスタッフだけができるのではもったいないということ。ブランドとは関係なく、興味ある方や若い世代にに教えていきたいと考えています。ファッション系や芸術系の学生さんなど、この技術でスリランカ国内でのビジネスに繋げられる可能性はゼロではないです。アーユルヴェーダの国ですから、植物を使った植物染の価値を、スリランカの中でまず見出してもらいたいなと思っています。