新企画!World Women Creators:第一弾は、コロンビアのWayuuが紡ぐモチーラ

皆さん、こんにちは。RICCI EVERYDAYの仲本千津です。


今日はRICCI EVERYDAYが新しく始める企画、”World Women Creators”について発表したいと思います。この企画では、ウガンダやアフリカに限らず、世界中の手工芸に着目し、製品を通じてその美しさや作り手の生活ぶり、あるいはその国が抱える課題などを、より深く知ろうという内容になっています。特に女性たちが中心となって織りなす手工芸をご紹介していく予定です。

兼ねてからこのコラムにも綴っていましたが、ワシントンD.C.への研修を経て、私の10年・20年先の目標が定まりました。そもそもRICCI EVERYDAYのビジョンは、「世界中の女性が、社会的通念や固定観念を乗り越え、本来のありたい姿を見出し、実現することができる世界」を目指そうと2020年に掲げたものがあります。しかし正直に言って、どのようにその目標を達成すればいいのか、迷っていました。「たいそうな目標を掲げてしまったけど、どうしよう」それが私の正直な気持ちでした。そんな時ワシントンD.C.の研修に参加して、普段の業務から離れて自分が人生をかけて取り組みたいことにフォーカスした時間を持てた時に、見えてきました。最終的に、「手工芸を仕事とする女性たちが、”ありたい姿”を実現できる世界を創る」というものに辿り着きました。


皆さんは、グローバルサウスにおいて手工芸に従事する人口は、農業に次いで多いということをご存じでしょうか。つまり適切な仕組みさえ創ることができれば、多くの人々にリーチしインパクトを出せるということなのです。その仕組みは今後検討していくとして、まずはどんな手工芸が世界にあるのか、どんな人々が営んできたのか、課題は何なのかなど、少しずつ知っていくことが大事だと思い、本企画に至ったわけです。


かなり大雑把な説明となってしまいましたが、これが今回の企画の背景です。昔からRICCI EVERYDAYをご存じの方は、「え!ウガンダじゃないの!?」と驚いてしまったかもしれませんが、完全に私の知的好奇心を満たしつつ、RICCI EVERYDAYの未来につながる実験的企画ということです笑。ぜひ皆さんも私たちと一緒に、この企画を楽しんでいただけたら嬉しいです。


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前置きが長くなりましたが、そんな”World Women Creators”企画の第一弾は、コロンビアのWayuu(ワユー)族が織りなすバッグ、「モチーラ」を取り上げます。la narrativa(ラ・ナラティーバ)というブランドのオーナーであり、RICCI EVERYDAYのスタッフでもある髙井さんに今回はインタビューをし、モチーラの魅力を存分に語ってもらうと共に、髙井さんが出会ったモチーラを作る女性たちの暮らしぶりや、髙井さんの視点からみたコロンビアの社会課題について、まとめてみました。

 

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la narrativaとは、「人に語れるもの(背景がしっかりあるもの)」という意味。髙井さんは背景がある商品に価値があると信じ、そんな商品を長く大切に

使っていくことを発信したいという思いから、このブランドをスタートさせました。背景を知ることで、生産者と消費者がより深くつながっていくことを目指しています。

そもそも髙井さんは、青年海外協力隊でコロンビアに2年間滞在していました。現地の人々が「鞄」を意味する「モチーラ」という名のバッグを持っているのを目にする中で、徐々にハマっていってしまいました。なんと2年間で20個以上(!)購入し、今でも大切にコレクションしながら日常的に使っているそうです。

 

<現地の人々の生活に根づくモチーラ>

コロンビアの人は「ちょっといいかばん」という感覚でモチーラを使っています。日本人にとって着物のような感覚でしょうか。モチーラを持つこと自体が特別なことであり、先住民族のWayuu族が生み出すモチーラに、コロンビア国民が誇りを持っているのだそうです。この話を聞いて、ガーナのアフリカンプリント生地を思い出しました。ガーナ人たちも、自国で作られるアフリカンプリントを、それは大事に、誇りを持って扱っている姿を、現地に訪問した時に何度も目にしました。きっとモチーラもそんな位置付けなのかなと想像しました。

モチーラが作られている場所は、海と砂漠に囲まれたラ・グアヒラというところ。モチーラが、今のかぎ針編みで作られるようになったのは植民地以降のことで、19世紀中ごろには商品として取引されていたそうです。かつては綿や羊毛を用いて製作されていましたが、現在はより安価な合成繊維を用いて編まれるようになりました。モチーラはワユーの人々も日常的に使用してきました。小さなモチーラは男性がお金やタバコを入れて、腰巻にぶら下げて使っていたそう。ススバッグ(ススとはワユーナイキで鞄という意味があります)は、ものをたくさんいれられるように、大きめサイズに作られていて、持ち手を頭に引っ掛けて持ち運ぶこともあるそう。バケツ型で編むことが先住民族たちの特徴で、部族ごとに選ぶ素材が異なるようです。

首都ボゴタに暮らす人は、週末に開催される青空マーケットに行って、モチーラやススバッグを買います。旧市街でも青空マーケットが開催されるので、そこにWayuu族が自分たちが作ったバッグを持ってきたり、中間業者がバッグを持ちよったりして、一堂に並べて売っています。

 

<モチーラの魅力>

今回の販売では、モチーラとモチロンというバッグを主に取扱います。モチーラの魅力は、ゆる可愛いところ。フリンジが付いていたり布が柔らかかったりして、リラックス感を醸し出していて、シャツに合わせると肩の力が抜けてリラックスした気持ちになります。いい意味で、日々の生活の緊張感がとけ、ギアが抜ける感じ。海の風を感じながら自然体の自分に戻れる感覚があります。モチーラの特徴は、なんといっても色鮮やかな柄でしょう! 編み方にパターンがいくつかあるそうです、伝統的な柄には意味が一つ一つ意味があるようです。柄の意味には諸説あるようですが、髙井さんが現地のワユーの人々から教えてもらったものをいくつか紹介します。

【知性】

 

モチーラには、写真のように三角形が組み合わさった柄が多く見られます。この三角形は「知性」を意味しています。

このように知性を表す三角形が斜めに組み合わされたものは、「成功への階段」を意味しています。

【星】

一見、花柄のようにも見えるこの柄は「星」を表しています。砂漠の広がるラ・グアヒラの夜は真っ暗。そして夜空いっぱいに星が輝くそうで、髙井さんはこの柄を見ると、その星空を思い浮かべてしまうそう。

 

【家・家族・氏】

こちらもモチーラではよく見かける柄だそう。なぜ家や家族、氏を意味するのかは、この柄が蛇(=家族の象徴?)を表しているからなのか、この形自体が家を表しているからなのか、、、教えてくれる人によって説明が異なることがあるそうで、やはり諸説ありそうです笑。

編み方にも、糸の一本取りと二本取りがあり、一本取りの方が高度な編み方で、時間がかかる分コストも高くなります。柄も細かく、薄いけれど丈夫な仕上がりになりますが、編める職人を見つけるのが一苦労なのだそうです。

 

<Wayuuの人々>

Wayuu族の社会は母系制社会という特性があり、母親がWayuu族で、父親がメスティーソ(混血)の人だとしても、子どもはWayuu族になります。一般的な男尊女卑の考え方は今でも残っているものの、女性の方が働き者で、女性が男性の言うことを聞くという場面はほとんどないそう。これはアフリカとは大きく異なる点だと感じました。モチーラの作り手は女性ですが、取引の場では男性も活躍しており、いい具合に役割分担が行われています。

編む人たちは基本的には女性がメインで、口承文化として、母から娘たちに、代々編み方が受け継がれています。最近では男性や子どもたちが編んだりもしているようですが、バッグの本体(袋の部分)は基本的には女性が編むという決まりだそうで、男性たちが編むのは持ち手の部分だけです。

 

Wayuu族は本業としてモチーラを作っています。魚やエビを海でとって市場で売ったり、塩田があるので塩作りをしたりしている人もいます。それらをローカルマーケットで売ることで、収入を得ています。

そしてこのエリアの特徴として、物物交換が今でも行われている場面を目にします。仮に皆さんがこのエリアをツアーなどで回る際は、ガイドに、たくさんの食べものを事前に買っていくことを勧められます。コミュニティの人々と交流するために、モノが大事になってくるのです。

 

<Wayuuの人々が直面する課題>

モチーラを作るWayuu族が暮らすラ・グアヒラという場所は、貧困層が多い地域で、経済・社会インフラ(学校や病院)が十分でなく、都市部と大きく異なります。最近のWayuu族の中には、都市部の大学に進学し、そのままそこで定職についたり、起業したりすることで、自活していこうとする人が多く見られます。そのためには、幼児教育や初等教育といったボトムアップが大事だと髙井さんは考えます。

そもそもコロナの感染拡大により、観光客がいなくなり、モチーラの販売を生業としている人たちは、大きな打撃を受けました。これはウガンダのものづくりコミュニティもそう。不測の事態に一番打撃を受けるのは、いつもコミュニティの中で弱い立場にある人々です。彼らが安定した生活を送るためには、国の社会保障が期待できない分、自分たちでどうにかしなくてはならないのです。

しかしこういう話をすると、伝統を捨てて都市部において現代的な暮らしをすることを良しとしているように聞こえるかもしれません。ただ、髙井さんは、「資本主義に乗るかどうかを、そもそも自分たちで選択できる環境を作ることが大事なのではないか」と考えます。現実や仕組みを知らないと、戦略的に動くことはできません。そして知るためには、文字の読み書きや考える力が必要となり、教育が重要となってくるのです。

髙井さんは今後、Wayuu族がその辺りをどのように考えているのかを調査したいと考えています。自分たちの言語(スペイン語とワユーナイキ語)や、モチーラを中心とした自分たちの文化をどのように守っていくのか。とても興味深いテーマですね。

さらに、髙井さんは、Wayuuの人々が暮らすエリアを走る移動図書館を作り、子どもたちの教育に貢献したいとも考えています。移動図書館を通じて、Wayuuの子どもたちの識字率を上げたり、大人が読み聞かせをする機会を作りたいそうです。届ける本は、初めはスペイン語で書きつつも、将来的にはWayuu自身で翻訳して、ワユーナイキ語の本を作ることも視野に入れています。自分たちの口承で伝わってきた物語を本にするということもできます。絵本を通して、子どもだけではなく大人も含め、伝統を受け継いでいくことに貢献できたらと、夢を膨らませます。

いかがでしたか。そんな髙井さんがお届けするla narrativaのモチーラたちを、ぜひRICCI EVERYDAYのオンラインストアにてチェックしてみてください。こういった背景があることを知ると、モチーラという商品の魅力が一段と増すように感じるのは私だけでしょうか!?いつかこのバッグを持って、ラ・グアヒラという場所を訪問したいなと思っています。

引き続き、RICCI EVERYDAYをご愛顧いただきますよう、どうぞよろしくお願いします。